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生理に伴う痛みを総称して「生理痛(月経痛)」と呼んでいます。月経痛の代表的な症状は、下腹部痛と腰痛ですが、なかには頭痛などがおこる人もあり、この場合の頭痛も広い意味での月経痛と言えます。
痛みの出現する時期には個人差があり、生理の前から痛み始めて、生理が始まると楽になる人もいれば、生理の1〜2日目がひどいという人もいます。痛み方も、少し痛むといった程度から、鎮痛薬をのんでも寝込んでしまうほど痛む人まで、じつにさまざまです。個人においても毎回違う場合もあります。
【月経痛の統計】
月経痛は女性の生活や社会活動に影響を与えます。厚生労働省が16〜50歳の働く女性を対象に行った調査によりますと、8割近い人が痛み止めを飲んだり我慢しているという実態があります。
(財)女性労働協会「働く女性の健康に関する実態調査」(平成15年度厚生労働省委託事業)より
【月経痛の症状】
月経痛及び月経痛にともなう症状としては
下腹部、腰痛がほとんどですが
頭痛、肛門痛、排便痛、背部痛、吐き気、嘔吐、胃の痛み、乳房緊満感、全身の倦怠感、いらいら、うつ、下痢、便秘、冷や汗、微熱などを伴う事もあります。
ほとんどは生理の前半に起こり、数時間から数日続くのが一般的です。
【なぜ月経痛は起こるのか】
生理中は子宮の筋肉が収縮して、不要になった子宮内膜や血液(月経血)の排泄を促します。この子宮の筋肉の収縮が強く又は持続的になると月経痛として感じます。
月経痛が強くなる原因は以下のように様々です。
1.子宮の筋肉を収縮させるプロスタグランジンという物質が過剰に産生される
体質や病気によりプロスタグランジンの分泌量が多いと、必要以上に子宮が収縮して月経痛が強くなります。
2.子宮口(月経血の出口)が狭い
若い女性では子宮がまだ成熟していないために、子宮口が狭くて月経血をスムーズに押し出すことができません。 このため、子宮は強く収縮して月経血を押し出そうとします。出産で子宮口が広がって、月経痛がなくなる人も少なくありません。
3. 子宮の血流不足や酸素不足
子宮の血流が不足すると、子宮に老廃物がたまって収縮を強くする原因となります。
また精神的ストレスや緊張などで自律神経が異常にはたらくと血管が収縮し子宮への血液の供給不足や酸素不足をもたらすこともあります。
4. 神経的要素で痛みに過剰敏感
生理自体への恐怖や妊娠しなかった喪失感などで精神的に痛みに敏感になることがあります。
【月経痛の分類】
月経痛が日常生活に支障を来すほどひどい場合を月経困難症といいます。
器質性月経困難症 (病気が原因の月経痛) 10%
子宮筋腫、子宮内膜症などの病変が原因で起こる月経痛のことを言います。この場合は、30代や40代に発症することが多く、生理が来る度に痛みが伴い、次第に悪化する傾向があります。また、月経痛は生理時だけではなく、生理前あるいは生理後にも見られ、痛みの持続期間が長いという特徴があります。
機能性月経困難症 90%
原因となる病気がない場合でほとんどの月経痛がこれに当たります。初潮から20代前半まで発症することが多く、結婚や出産に伴い、次第に改善ないし解消されます。また、月経痛の程度に波があり、ひどい時とそうでない時があり、生理の初日あるいは二日目まで痛みを感じ、生理の後半になると痛みがなくなるケースがほとんどです。
【婦人科に相談した方が良い月経痛】
鎮痛薬が手放せない
生理のたびに痛みがひどくなる
上記の場合は何らかの病気が原因となっている器質性月経困難症の可能性があります。その場合は月経痛の原因となっている病気を治療しない限り症状はましになりません。
ご自分の月経痛の奥に病気が隠されていないか一度産婦人科で調べてもらうことをお勧めします。
【治療は?】
鎮痛薬(非ステロイド性消炎鎮痛薬)
痛みの原因となるプロスタグランジンの産生を抑えることで効果を示します。月経痛の大半は市販の痛み止めを服用していると考えられます。一度痛みが強くなってしまうと、後から痛み止めを飲んでも痛みは治まりにくいので、月経が始まったらすぐに服用することがコツです。ただし飲み過ぎると胃があれたりする副作用があります。
市販の鎮痛剤(バファリン、ナロンエース、セデス・ハイ、イブA錠)やロキソニン、ボルタレン、ポンタールなどがあります。
筋弛緩薬
子宮の平滑筋の収縮を一時的に和らげるための対症療法で、月経痛の原因そのものを治すものではありません。
よく処方される筋弛緩薬としてブスコパンがあります。
低用量ピル
NSAIDsに代わって近年、頻繁に使われるようになっているのが低用量ピルです。ピルを服用すると、子宮内膜の増殖を抑えることによって、プロスタグランジンの産生が抑えられ月経痛が改善できます。痛み止めを用量以上に飲むよりは、低用量ピルの方が安全と考えられます。痛み止めがなかなか効きにくい人はぜひ考慮すべき方法です。※2010年11月から生理痛のための保険適応のピルが発売されました。当クリニックでも扱っておりますのでご相談ください。
精神安定剤の服用
ストレスによる月経痛を一時的に和らげるための対症療法で、月経痛の原因そのものを治すものではありません。
器質性病変の治療
続発性(器質性)月経困難症における月経痛の治療は、その原因となる器質性病変の治療に伴います。
漢方薬
漢方薬は一般の痛み止めのように効果がすぐに現れるものでなく、体を温め、血液循環改善など体質改善の効果が期待できます。
桂枝茯苓丸、桃核承気湯、大黄牡丹皮湯、加味逍遙散、当帰芍薬散などがあります。
その他
鍼灸治療、整体、マッサージなど
自律神経を整えたり、骨盤内の血液のめぐりをよくしたり、ストレス解消により月経痛を軽減する作用が期待できます。
【日常の注意点】
日々の生活を見直すだけで月経痛もましになることがあります。
○ 骨盤内の血行をよくする
骨盤内の血液のめぐりが悪いと月経痛を強くします。特に月経中はからだを温めることが大切です。
・月経中もぬるめのお湯にゆったりつかる。(外陰部を清潔に保ち、骨盤内のうっ血をとるため)汚れるのが心配なら、入浴中だけでもタンポンを使用する。シャワーでもOK。
・ 下腹部と腰に使い捨てカイロをあてる。
・ 冷たい物のとりすぎを控え、温かい飲み物や食事をとる.(味噌汁、生姜湯、梅干湯など)
・ 長時間の立ちっぱなしは骨盤のうっ血をさらに悪くします。
○ふだんから血行をよくする工夫をする。
・ 定期的にスポーツや適度な運動で汗をながす。
・ きついガードルやジーンズ、靴ははかない。
・ 便秘を解消する。トイレをがまんしない。
○自律神経機能を高める。
月経時はホルモンが極端に変化する時期です。月経中はその影響を受けて、自律神経失調状態にあると考えられています。また、強いストレスが自律神経を乱し、子宮の筋肉を強く収縮させたり、血管を収縮させることで子宮の血流が悪くなってさらに月経痛や月経不順の原因となることも多いのです。
○たばこは月経痛を強くする。
たばこの成分のなかには、血管を縮ませる作用があり、たばこを吸うとさらに月経痛がひどくなります。
○ 乳製品をできるだけ控えて、動物性脂肪を減らす。
乳製品や肉の摂取過多は、月経痛の原因物質プロスタグランジンの体内での生産過多を起こします。具体的には、魚を多く食べ、揚げ物を減らすことが重要です。
「生理痛は病気でないから…」とガマンせずにぜひご相談ください。